原子力発電関連銘柄(原発関連株)とは、原子力発電所(原発)を所有する会社や、原発の建造や稼働に必要な製品・サービスを提供する上場企業をさします。
世界規模での産業の活発化と生活水準の向上に伴う電力需要が増加する中、天然ガスや石炭価格の高騰で、日本国内でも電気料金やガス料金の値上がりが顕著となっており、そんな中2022年、岸田首相を議長とする「第1回GX実行会議」が開催されました。
GX実行会議の「GX」とは「Green Transformation(グリーン・トランスフォーメーション)」の略で、産業革命の時代から続く化石燃料中心の経済・産業の構造を、クリーンエネルギー中心のものに移行させるため、社会全体を変革すること、また政府が掲げるカーボンニュートラルの実現に向けて、社会システムそのものを変革する取り組みそのものを意味します。
日本を含む100以上の国と地域が2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言しており、日本では2030年度の温室効果ガス46％削減を国際公約として掲げています。
そんな中2022年、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、世界のエネルギー情勢は一変。1973年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて緊迫した事態に直面していると言われており、同年7月に行われた第1回GX実行会議では150兆円規模の投資を進めるための今後10年のロードマップを取りまとめると宣言。そして12月に行われた第2回GX実行会議にて、GXに関する基本方針をもとに脱炭素投資を加速させることを発表。今後10年間のエネルギー安定供給と脱炭素化についての基本方針を決定し、次世代原子力発電所の開発・建設を推進し、既存原発の60年超の運転を認めることを宣言しました。
原発の新規建設や運転延長など、2011年3月の東京電力福島第一原発事故後、原発の新増設や建て替えを「想定していない」としてきた政府方針を大幅に転換する内容が基本方針案として盛り込まれたことで、原子力発電関連銘柄(原発関連株)に注目が集まっています。
今後さらに注目されるべき原子力発電の動向に伴う原子力発電関連銘柄の値動きなどについてまとめ、それに伴う原子力発電関連銘柄の急騰例もご紹介します。
原子力発電関連銘柄の中でも人気の本命株8銘柄、出遅れ株7銘柄、大穴株2銘柄を含む注目株全32銘柄をまとめ、詳細説明も記載しているので、銘柄選定のお役に立てればと思います。
目次
改めて考える原子力発電のメリット・デメリット
原子力発電所の原理は火力発電と同じです。火力発電所のボイラーにあたるものが原子炉で、この中でウラン燃料が核分裂を起こして熱をつくっています。この熱により水を水蒸気に変え、タービンを回し、電気をつくっているのです。わずかな量の燃料で大量のエネルギーを生み出し、一度燃料を入れると、少なくとも、1年間連続運転ができます。
原子力発電所の運転期間は原則40年、最長60年と定められていますが、2022年12月、政府は実質的に上限の60年を超えて運転できるようにする基本方針を取りまとめました。この背景には、脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給に向けて、既存の原発を最大限活用する方針があります。
もちろん反発の声も多く、この動きに政府がどのような対応を行っていくかも今後の焦点のひとつとなります。
原子力発電のメリット
- 発電時にCO2(二酸化炭素)を排出しない
- 発電コストが安定している
原子力発電のメリットとして主にこの2点が挙げられています。
発電コストとして原子力発電の燃料となるウランは限りある資源であるものの、まだ100年以上はもつとされており、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)をほとんど出さないことがメリットだと言えます。
ただ原子力発電を推し進めながらも、核融合発電についても研究は続いているため、将来的には状況は変わってくるかもしれません。
原子力発電のデメリット
- 原発事故の危険性
- 放射性廃棄物の処理問題
- 放射線が放出された場合の人体への影響
- 維持費などのコスト
2011年3月の東京電力福島第一原発事故を経験していることもあってデメリットは誰もが知るものばかり。「原発ゼロ」を望む声もある中、今後どのようにこれらの基本方針を進めていくのか。
世界規模で異常気象が頻発し、気候変動対策やエネルギー不足、電気料金の高騰などの問題もある中、原発をめぐる政策転換に踏み出した今後の状況も株式市場には大きな影響を与えそうです。
GX実行会議
GX実行会議ではいくつかの分野における「今後10年を見据えたロードマップの全体像」を公表しており、その中で原子力政策の今後の進め方として2030年度電源構成に占める原子力比率20～22％の確実な達成に向けて、安全最優先で再稼働を進めるとしています。
「GX実現に向けた基本方針（案）～今後10年を見据えたロードマップ～」では、「原子力は、出力が安定的であり自律性が高いという特徴を有しており、安定供給とカーボンニュートラル実現の両立に向け、脱炭素のベースロード電源としての重要な役割を担う。」としており、「既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。」と事実上の60年を超えて運転できるようにする基本方針を取りまとめています。
原子力発電関連銘柄(原発関連株)まとめ
原子力発電関連銘柄(原発関連株)は主に原発を所有する電力会社、原発の関連製品やサービスを提供する企業が原子力発電関連銘柄(原発関連株)のテーマ対象となります。
原子力発電関連銘柄(原発関連株)日本の大手電力会社10社
| 証券コード | 企業名 | 補足 |
|---|---|---|
| 9501 | 東京電力ホールディングス | 日経平均株価の構成銘柄。柏崎刈羽原子力発電所を保有。 |
| 9502 | 中部電力 | 日経平均株価およびTOPIX Large70の構成銘柄。浜岡原子力発電所を保有。 |
| 9503 | 関西電力 | 電気の販売量で日本国内第2位。日経平均株価およびTOPIX Large70の構成銘柄。美浜発電所、大飯発電所、高浜発電所を保有。 |
| 9504 | 中国電力 | 山口県営の電力事業などをもとに発足した経緯から、山口県が大株主となっている。島根原子力発電所は2023年度再開予定。 |
| 9505 | 北陸電力 | 石炭火力に依存。保有する志賀原子力発電所は運転停止。 |
| 9506 | 東北電力 | 東北地方、新潟県、関東地方などで電力小売事業や発電事業等を行う。保有する東通原子力発電所、女川原子力発電所はどちらも運転停止。 |
| 9507 | 四国電力 | 伊方発電所を保有。かつて、四国の電力供給の4割を担った。 |
| 9508 | 九州電力 | 九州以外に、関東地方での電力販売や、福島県・山口県などでの再生可能エネルギー発電事業を展開。川内原子力発電所、玄海原子力発電所を保有。 |
| 9509 | 北海道電力 | 北海道で唯一の原子力発電所である泊発電所を保有。 |
| 9511 | 沖縄電力 | 供給地域は沖縄県内のみであり、日本の電力会社の中で最小。全発電量の9割以上火力発電。 |
その他原子力発電関連銘柄(原発関連株)一覧
| 証券コード | 企業名 | 補足 |
|---|---|---|
| 1945 | 東京エネシス | 火力・原子力発電の関連設備工事を事業の主体とする建設会社。 |
| 1963 | 日揮ホールディングス | 米ニュースケール・パワーの次世代原発のSMR(小型モジュール原子炉)開発に出資。 |
| 1966 | 高田工業所 | 原子力発電所のステンレスライニングや大型貯槽、配管などの建設を行う。 |
| 1968 | 太平電業 | 日本初の日本原子力発電・東海発電所を皮切りに日本の原発の約70％の建設実績。 |
| 1976 | 明星工業 | 原子力発電所の建設やメンテナンス。特別に設計された精度の高い材料と工法によって施工された原子力発電プラントの断熱。 |
| 5631 | 日本製鋼所 | 原子炉に使用される鍛鋼部材「原子力圧力容器用シェルフランジ」を手掛ける。 |
| 6356 | 日本ギア工業 | 日本の原子力発電所のバルブアクチュエータに於いては90％以上のシェア。 |
| 6378 | 木村化工機 | 核燃料輸送容器、核燃料濃縮関連機器、放射性廃棄物処理装置などを手掛ける。 |
| 6466 | TVE | 原子力発電用バルブ(ウェッジゲート弁や安全弁など)を手掛ける。 |
| 6501 | 日立製作所 | 原子力発電所の内部をメタバース(仮想空間)で再現し、保守や点検などの作業訓練ができるシステムを開発。 |
| 6502 | 東芝 | 東芝エネルギーシステムズが小型原子炉「MoveluX(ムーブルクス)」を開発中。 |
| 6503 | 三菱電機 | 三菱重工業(7011)との発電機事業を統合して新たに合弁会社を設立するべく、具体的検討に入ることをそれぞれ決定し、基本合意。 |
| 7011 | 三菱重工業 | 三菱電機(6503)との発電機事業を統合して新たに合弁会社を設立するべく、具体的検討に入ることをそれぞれ決定し、基本合意。 |
| 7013 | IHI | 米ニュースケール・パワーの次世代原発のSMR(小型モジュール原子炉)開発に出資。 |
| 7711 | 助川電気工業 | 原子力関連機器を実験設備から原子力発電所向けまで多種にわたり設計・製作。 |
| 7760 | IMV | 振動試験装置、地震計や振動計などの業務用計測器メーカー。 |
| 8001 | 伊藤忠商事 | 天然ウランを年間約4,000トン(2009年現在)販売する世界屈指のウラントレーダー。 |
| 8002 | 丸紅 | 子会社の丸紅ユティリティ・サービスが原子力発電所向け、補修・サービス関連機器、技術コンサルテーション等を日本の電力会社に提供。 |
| 8031 | 三井物産 | 子会社の三井物産プラントシステムが原子力発電所の再稼働へ向けた安全対策支援、IoTによる効率化提案、大型発電設備建設や更新に伴う世界最大級のボイラー設備などの調達から重量物輸送業務などを行う。 |
| 8058 | 三菱商事 | 子会社の三菱商事パワーシステムズ株式会社が発電プラント(原子力・火力・水力)納入・受渡業務などを行う。 |
| 8061 | 西華産業 | 原子力発電プラントの防犯・防災設備等の周辺設備などの販売。 |
| 9513 | J-POWER | 大間原子力発電所の建設に関わる。 |
原子力発電関連銘柄の本命株8銘柄
原子力発電関連銘柄として最も注目すべきは、電力会社の中でも特に物色されやすい東京電力ホールディングス(9501)、関西電力(9503)、そしてウラントレーダーの伊藤忠商事(8001)、日立製作所(6501)、東芝(6502)、三菱電機(6503)、三菱重工業(7011)、助川電気工業(7711)などの大手企業はやはり本命株だと言えます。
原子力発電関連銘柄の本命株6銘柄の株価チャート
原子力発電関連の本命株 東京電力ホールディングス(9501)
原子力発電関連の本命株 関西電力(9503)
原子力発電関連の本命株 伊藤忠商事(8001)
原子力発電関連の本命株 日立製作所(6501)
原子力発電関連の本命株 東芝(6502)
原子力発電関連の本命株 三菱電機(6503)
原子力発電関連の本命株 三菱重工業(7011)
原子力発電関連の本命株 助川電気工業(7711)
原子力発電関連銘柄の出遅れ株7銘柄
今後、国内の原子力発電所の新規制基準適合性審査等の対応状況が現在審査中となっている原子力発電所に進展がある場合、電力会社は今後物色されるかもしれませんが、過去の状況を踏まえると値動きが観られる銘柄は限りがあるかもしれません。これらを踏まえると中部電力(9502)、北海道電力(9509)あたりは出遅れ株として注目していてもよさそう。また高田工業所(1966)、日本ギア工業(6356)、木村化工機(6378)、日本製鋼所(5631)、IMV(7760)など部材を扱う企業も値動きに拍車をかけるかもしれないという意味では出遅れ株として注目したい銘柄です。
原子力発電関連銘柄の出遅れ株7銘柄の株価チャート
原子力発電関連の本命株 中部電力(9502)
原子力発電関連の本命株 北海道電力(9509)
原子力発電関連の本命株 高田工業所(1966)
原子力発電関連の本命株 日本ギア工業(6356)
原子力発電関連の本命株 木村化工機(6378)
原子力発電関連の本命株 日本製鋼所(5631)
原子力発電関連の本命株 IMV(7760)
原子力発電関連銘柄の大穴株2銘柄
2022年12月23日、米国の小型モジュール式原子炉(SMR)の技術開発を行うニュースケール・パワーはSMRの標準プラント設計(SPD)プロジェクトを完了したと発表。原子力に関する深い専門知識を持つ2人の新取締役を任命しており、今後の動きがさらに加速すると見られることから、ニュースケールに出資している日揮ホールディングス(1963)、IHI(7013)は大穴株と言えるかもしれません。
原子力発電関連の本命株 日揮ホールディングス(1963)
原子力発電関連の本命株 IHI(7013)
その他原子力発電関連銘柄の注目株15銘柄
その他原子力発電関連銘柄の注目株15銘柄の株価チャート
原子力発電関連の本命株 中国電力(9504)
原子力発電関連の本命株 北陸電力(9505)
原子力発電関連の本命株 東北電力(9506)
原子力発電関連の本命株 四国電力(9507)
原子力発電関連の本命株 九州電力(9508)
原子力発電関連の本命株 沖縄電力(9511)
原子力発電関連の本命株 東京エネシス(1945)
原子力発電関連の本命株 太平電業(1968)
原子力発電関連の本命株 明星工業(1976)
原子力発電関連の本命株 日本製鋼所(5631)
原子力発電関連の本命株 TVE(6466)
原子力発電関連の本命株 丸紅(8002)
原子力発電関連の本命株 三井物産(8031)
原子力発電関連の本命株 西華産業(8061)
原子力発電関連の本命株 J-POWER(9513)
原子力発電関連銘柄の値動きを上手く狙いたい人は？
原子力発電関連銘柄を物色しようとする投資家の姿勢が強く出る場面は、GX実行会議で取りまとめた内容の実現に向けた動きが加速したとき、また実行が近いとみられるときなどに起こる可能性があります。
また今回取り上げた銘柄以外にも、原発再稼働に関わる企業は政府の動きや海外の関連企業なども含め広い視点で注目しておきたいところ。
また核融合関連銘柄や再生可能エネルギー関連銘柄、またその他の発電に伴う関連銘柄の物色に紛れて株価が跳ね上がるケースなど、他のテーマに紐づいて物色されることも少なくないため、原子力発電関連銘柄の値動きを狙う際は、「発電」「エネルギー」「地球温暖化」など複数のテーマ性にも視野を広げておくべきテーマだと言えます。
今回は原子力発電関連銘柄についてまとめてみましたが、こうしたテーマ株はニュースや新聞で取り上げられたり、著名なアナリストが紹介したりするなどして物色され、人気を強めてくるケースも多く見られます。
なので投資家からの注目を集め株価を上げてくる銘柄を上手く狙いたいと思われる方は、リアルタイムに最新のニュースや話題性に絡んだ銘柄情報などを配信している株情報サイトにメルマガ登録するなどして、『自分で時間をかけて色々と情報をチェックする』のではなく『アナリストなどが簡潔にまとめてくれた情報をリアルタイムに受け取る』ようにしておくといいかと思います。
この後の相場で流れに沿ったテーマ株を上手く物色していきたいと少しでも思われる方は、試しにでも一度、銘柄情報など株式投資に関連する情報を配信しているサイトを日々のトレードに活用してみることをおすすめします。
最近は利用者が多い株情報サイトや、株業界で著名な方や人気のアナリストがテーマ株を取り上げることで物色人気が強まるケースも珍しくありません。
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原子力発電関連銘柄にも関連報道が増えてきたら定期的に更新していこうと思います。
