2017年9月12日(現地時間)にiPhone8/iPhoneXが発表され、話題となっている理由の一つに有機ELの搭載があります。
新型iPhoneの発表に伴い「有機ELって何?」と気になって調べている方も多いのではないでしょうか。
この「有機EL」とは、OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)と呼ばれ、その名の通り発光ダイオードの一種です。
私たちが今使っている液晶ディスプレイとは違った新しい景色を見せてくれるこの有機ELは、一体液晶と何が違うのでしょうか?
その構造や原理はもちろんのこと、現在製品化されている有機EL製品や新発表されたもの、そしてどのような課題が残っており、今後どんな市場を形成するのか。
有機ELについてのすべてをご紹介します。
また、有機EL関連銘柄=有機ELの流行・普及によって恩恵を受ける企業もご紹介します。
今回は、「有機ELディスプレイ関連」「有機EL製造装置関連」「有機EL材料・部材関連」の3つに分類して、計25銘柄ご紹介します。
目次
有機EL(OLED)とは
有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)とは、OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)と呼ばれる、発光材料に有機化合物を用いた発光ダイオードを意味します。
スマートフォンやテレビなど、主にディスプレイへの用途として世界中で研究が進められている新技術なので、興味を持った方には是非すばらしさを知っていただきたいと思います。
「現在広く使われている液晶」と「現在研究開発が進められている有機EL」この両者にはどんな違いがあるのか?そのメリットやデメリットを原理や構造とともにご紹介します。
有機ELの構造と原理
有機EL関連銘柄を知るには、まずこの技術そのものを知る必要があります。
技術の構造・原理を理解すれば、企業ごとに関わっている部分が明確に理解できるからです。
今回は有機ELの代表と言っても過言ではない、テレビ・ディスプレイを元に、その原理・構造を解説しようと思います。
有機ELディスプレイの構造・原理
有機ELディスプレイは上記の図のように
陰極(-)/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/陽極(+)
という順序で構成されています。
発光する原理としては、陰極・陽極に電圧をかけることで、陰極から電子輸送層へ電子が注入され、陽極から正孔輸送層へ正孔(せいこう)が注入されます。
この
電子・正孔の流れは、
陰極(-)→電子輸送層→発光層←正孔輸送層←陽極(+)
となり、両側から発光層へ向かってサンドウィッチ状に作られていることが分かると思います。
このサンドウィッチ状の構造はテヘロ構造と呼ばれ、電子と正孔を別の層に閉じ込めることで効率的な反応を起こすことを可能としています。
こうして生まれる光に色を付けてディスプレイの画面に出力します。
そして、この「色の付け方」で、韓国の大手メーカー「Samsung(サムスン)」と「LG」は反対の道を選ぶこととなりました。
同じ有機ELディスプレイでも「色の付け方」が違う?
有機ELディスプレイでの色の付け方は、主に2種類に分けられます。
有機ELディスプレイのメリットである薄さ・鮮やかさは、この「色の付け方」によって大きく左右されます。
RGB塗り分け方式
まず、有機ELディスプレイの理想と呼べる方法が「RGB塗り分け方式」です。
赤・緑・青それぞれ独自に発光し、3色を混ぜることで様々な色を再現します。
色の再現度が高くコントラストに優れており、有機ELディスプレイの目玉である「黒の黒さ」が特徴です。
問題点として、色ごとに輝度の劣化スピードが異なり、パネルの寿命が短いことが挙げられているほか、3色を別々に作らなくてはならないことから、製造が困難とされています。
韓国大手メーカーサムスンがこの方式を採用したものの量産化に失敗し、テレビ分野では液晶で勝負しているのが現状です。
カラーフィルター方式
そして次に「カラーフィルター方式」です。
その名の通り、カラーフィルターを通すことで色を変化させます。
カラーフィルターを通すので、発光する際の色は白一色だけでよく、製造が容易でコストカットに繋がります。
また、韓国大手メーカーLGがこの方式を採用したことで、現在、有機ELテレビ市場はLGの独占市場と言っても過言ではありません。
日本の有機ELテレビに使われている有機ELパネルも、LGから調達したものになります。
しかし、カラーフィルター方式は、その構造から液晶テレビと同じような色域になることや、有機ELディスプレイの特徴である「薄さ」を一部諦めた構造になっていることが問題として挙げられます。
他にも「色変換方式」と呼ばれる方式があり、青色発光層を用いて、その一部を色変換層で赤・緑に変換する方式がありますが、色変換が困難なことにくわえ青色材料の研究が十分でないことから、現在実用化には至っていません。
どれも長所・短所がありますが、消費者的にはやはり「RGB塗り分け方式」の研究開発に期待したいところです。
有機EL関連銘柄にも関わる「蒸着」と「印刷」とは?
ガラス基板に有機材料を付着させる方法として、「蒸着方式」と「印刷方式」があります。
どちらの方式が一般的になるか、より研究が進むかによって、関係する企業も違ってくることから、有機EL関連銘柄にも大きな影響を及ぼす項目となっています。
「蒸着方式」
蒸着方式は、真空中で粉末の有機材料を加熱・蒸発させて、基板の表面に付着させることで薄い膜を作る方法です。
ちなみに80年代のヒーロー、宇宙刑事ギャバンの変身方法も「蒸着」だったり。
有機ELの蒸着は、任意の場所に付着させるために「蒸着マスク(メタルマスク)」が使われます。
「精密なパターン加工ができ、有機材料を蒸発させる際に膨張せず、軽い」ことが求められ、蒸着方式には欠かせないものになっています。
後ほど紹介する有機EL関連銘柄の中では、「ブイ・テクノロジー(7717)」や「凸版印刷(7911)」が、この蒸着マスクの製造を手掛けています。
蒸着方式が一般的な今、必須の技術を持っている企業です。
「印刷方式」
JOLED(出典)http://www.j-oled.com/technology/joled_tec_print/
印刷方式は、有機材料を大気中で印刷することでEL層を作り出す方法です。
蒸着方式と違って真空環境が不要、蒸着マスクが不要といった、製造するための投資が少ないことや、必要な場所にのみ必要な分量を塗布するため材料ロスも少ないことが特徴です。
しかし、この印刷方式の実用化は非常に困難で、ほとんどの企業が研究を諦め、蒸着方式へ移行することとなりました。
そんな中、2017年5月17日、「印刷方式では世界初となる有機ELパネルを開発し、4月にサンプル出荷を開始いたしました」との発表をした会社がありました。
この発表を行ったのは、ジャパンディスプレイ(JDI)・ソニー・パナソニックの有機EL事業を統合して設立された会社「JOLED(ジェイオーレッド)」です。
印刷方式において、パナソニックが長年研究開発を行ってきた一方、ソニーは印刷方式をやめて蒸着方式へ移行したという経緯もあり、JOLED代表取締役社長 東入来氏は「議論はあったが、難しい印刷方式を貫くことが成功に繋がる一点と考えた」と述べました。
まずは医療用ディスプレイとしてサンプル出荷し、これからゲーミング・車載など幅広い分野を視野に入れ、有機ELパネルの研究開発を進めていくそうです。
今後、印刷方式の有機ELディスプレイが一般的になれば、有機ELディスプレイ全体の値段が大きく下がり、私たちの身の回りにある液晶がほとんど有機ELになるのではないでしょうか?
有機ELと液晶の比較 -メリット・デメリットは?-
JOLED(出典)http://www.j-oled.com/oled/about_oled/
次世代ディスプレイ・テレビとして話題を呼んでいる有機ELですが、現在私たちが一般的に使っている液晶とどんな違いがあるのでしょうか?
そのメリット・デメリットを考察するために、まず構造の違いを見てみましょう。
まず、有機EL(OLED)は前述した通り、有機化合物そのものが発光するので、バックライトがなく、背面がスッキリした構造になります。
一方、液晶(LCD)はバックライトの光をカラーフィルムに通して色を再現することから、分厚くなり、黒を表現する場合もバックライトの光が漏れてしまいます。
有機ELでのカラーフィルター方式が、理想の有機ELディスプレイではないと言われるのは、有機ELを活用しきれず、上記の液晶の構造を流用していることにあります。
大まかな構造が分かったところで、次は有機ELのメリット・デメリットを見てみましょう。
メリット
薄い・軽い
前述した通り、やはり一番わかりやすく実感しやすいメリットは「薄さ」です。もちろん薄ければ「軽さ」もメリットとして付いてきます。
この薄さ・軽さのお陰でスペースを必要としないディスプレイになっており、これまでスペース的な問題で諦めていた大画面も、これからはポスターと同じような感覚で設置することが可能です。
例えば韓国メーカーLGからは、薄さ3.9mmで”壁に貼る”有機ELテレビが発売されています。
LG(出典)http://www.lg.com/jp/tv/lg-OLED65W7P
圧倒的な高画質
有機ELは、素子1つ1つが独自に発光することから、コントラストが高く、色鮮やかな映像を映し出すことができます。
また、バックライトのある液晶では、光が漏れてしまって再現できない「真っ暗」を再現することができます。
真っ暗な中で微かに見える景色も再現できることから、映画鑑賞に最適とされています。
見たことのある映画でも、有機ELテレビで見ることで、液晶では見られなかった景色に出会うことができるかもしれません。
広い視野角
有機ELテレビの視野角は180°と、極端に言えばほぼ真横からでも正面と変わらない映像を見ることができます。
一方液晶の場合、視野角160°を謳うテレビでも、実質70°以上の角度で色が変わってしまいます。
有機ELテレビならテレビの角度を気にする必要なく、リビングでも各自お気に入りの場所から変わりない映像を楽しむことができます。
デメリット
寿命が短い
現在私たちが使っている液晶テレビの寿命は、一般的に6万時間と言われています。一方、有機ELの一般的な寿命は半分の3万時間。
半分ともなると、とても短いように思えますが、1日5時間視聴すると仮定しても16年ほど使用可能な計算になります。ブラウン管テレビと同等以上の寿命であり、水準的には悪くはないかもしれません。
デバイス | 一般的な寿命(1日5時間視聴での寿命) |
---|---|
プラズマディスプレイ | 10万時間(54年) |
液晶ディスプレイ | 6万時間(32年) |
有機ELディスプレイ | 3万時間(16年) |
ブラウン管 | 2万時間(10年) |
また、LGは「現在は10万時間に延長されている」と主張しており、今後このデメリットは解消され、長寿命化の研究開発に問題はなさそうです。
直射日光下では見えにくい
有機ELディスプレイは、バックライトが必要ないことで多くのメリットがありましたが、バックライトを持たないことでのデメリットも発生します。
液晶に比べて最高輝度が低いため、直射日光下で画面が見づらいという欠点です。
テレビに関しては部屋の中なので、実感することは少ないかもしれませんが、有機ELディスプレイ搭載のスマートフォンだと、屋外での使用にストレスを感じることがあるかもしれません。
しかし、パナソニックが発表した有機ELテレビでは「明るさ2倍」を謳っており、今後の研究開発次第で、このデメリットも解消されるかもしれません。
画面の焼き付き
焼き付きとは、素子に電気を流し続けることで劣化・色落ちしてしまい、ディスプレイにうっすらと同じ画面が残る現象です。
価格.com掲示板(出典)http://bbs.kakaku.com/bbs/J0000016121/SortID=19163172/ImageID=2317271/
上記の画像は、携帯ショップのデモ機で焼き付きが発生している様子です。
基本的に1回起こると直すことはできません。しかし、普通に使っていれば、デモ機のように高い輝度で長時間同じ画面を表示することはないと思うので、日常生活で普通に使っていればさほど気にしなくても影響はないと思われます。
仕事や趣味などで同じ画面を表示し続ける必要のある方には、大きな問題になるかもしれません。
焼き付きの対策としては、「必要以上の輝度で使用しない」「長時間同じ画面を表示しない」などが挙げられるので、定期的に画面を切り替えて使うことで防ぐことができます。
有機ELと液晶の比較 -まとめ-
有機ELも液晶もそれぞれメリットデメリットがありますが、有機ELに関しては今後の研究開発でデメリットがどんどん解消されることでしょう。
また、デメリットの減少とともに普及率も増え、今後は有機ELが一般的になることで大きな市場規模を形成するのではないかと思われます。
続々と登場する有機ELテレビやディスプレイ その市場規模は?
まだまだ研究段階というイメージの強い有機ELですが、すでに製品化されているもの、新技術として発表されているものなどが続々と登場しています。
今後、有機ELディスプレイは一般的になるのか?
そして、有機ELの市場規模はAppleやiPhoneが大きく左右するという予測が出ています。
各メーカーの個性が現れる 有機ELテレビ
有機ELと聞いて一番に思いつく製品がテレビではないでしょうか?
現在、日本でもすでに多くの有機ELテレビが発売されており、使われている有機ELパネルは全て韓国メーカーLG製のものになります。
しかし、同じパネルだからどれを買っても同じというわけでもなく、逆に同じパネルだからこそ各メーカーごとの個性が目立つ製品になっています。
ソニー BRAVIA A1
SONY(出典)http://www.sony.jp/bravia/a1_sp/
バックライトの必要ない有機ELを活かして、正面から見た大部分が画面というシンプルなデザインになっています。空間に映像が浮かび上がっているかのような美しさを体験することができるでしょう。
また、画質だけではなく「音」にもこだわり、他社との差別化を図っています。一般的にテレビのスピーカーは、画面の下についており、私たちはそれに何も違和感を感じずに視聴していたと思います。
しかし、このBRAVIA A1は、画面の後ろ側にスピーカーが配置されており、映像と同じ場所から音が出力されます。
例えば、映画の主人公が右から左へ歩きながらセリフを言うと、声も同じく画面の右から左へ移動しながら聞こえるので、映画館さながらの臨場感で「映像と音の一致」を楽しむことが可能です。
パナソニック EZ1000
Panasonic(出典)http://panasonic.jp/viera/products/ez1000/
パナソニックは、プラズマテレビ時代に培った、自発光型ディスプレイならではの絵作りに関するノウハウを活かし、「画質」で勝負しています。
ガラス面の映り込みの色にまでこだわった設計により画質の向上を図り、映画やスポーツ観戦向きの有機ELテレビを完成させました。
2016年にヨーロッパを中心に有機ELを製品化した経験もあり、豊富な経験と知識を活用した「画質」での勝負は、LGに真っ向から勝負を挑んでいるようにも見て取れます。
東芝 X910
東芝(出典)http://www.toshiba.co.jp/regza/lineup/x910/index_j.html
東芝は、全チャンネル自動録画機能「タイムシフトマシン」やゲーム向け低遅延モードなど、従来から人気の高い機能を有機ELテレビにも搭載した、「東芝のレグザ」を好むファンに向けた製品となっています。
レグザのファンが、テレビという製品に敏感なことから、他社に先駆けて有機ELテレビを発売したのではないかと思われます。
有機ELの鮮やかさ、薄さはもちろんのこと、実用性に富んだ機能が揃っている製品です。
続々登場 有機EL搭載スマートフォン
近年、YouTubeなどの動画サイトの流行で、スマートフォンを使っての動画視聴の需要が非常に高まっています。
加えて、スマートフォンでの映画鑑賞やVR体験などにより、ユーザーが画質を求める傾向にあります。
また、スマートフォンのタッチパネルに有機ELタッチパネルを使うことで、画質の向上はもちろん、フレキシブル化(柔軟性を持たせること)により、そのデザインも変化しつつあります。
韓国メーカーサムスンが発売したスマートフォン「Galaxy S8+」では、ベゼル(画面の周りを囲っている部分)が占める割合を小さくすることで、大部分を画面に割り当てています。
もちろん有機ELタッチパネルを使った画質向上や、色の鮮やかさもアピールポイントとしており、大画面・画質向上など、やはり動画鑑賞を意識していることが分かります。
docomo(出典)https://www.nttdocomo.co.jp/product/smart_phone/sc03j/
また、同じく韓国メーカーLGも、有機ELディスプレイを使ったスマートフォン「LG V30」を発表しました。
LG(出典)http://www.lg.com/jp/press-releases/20170901-lg-v30-oled-fullvision-display
わずか7.3mmのスマートフォン「LG V30」は、2017年8月31日ドイツ・ベルリンにて開催された、欧州最大の家電見本市「IFA 2017」で発表・公開されました。
有機ELを使ったアピールポイントのほか、カメラのレンズにガラス素材の「Crystal Clear Lens」を用いることで、より正確かつクリアな写真を撮ることができるとしています。
日本での発売はまだ未定ですが、9月21日で韓国で発売し、その後北米・アジア・ヨーロッパ・アフリカ・中東の重要な市場で販売していく予定です。
LG「透明で折り曲げ可能な77型4K有機ELディスプレイ」を発表
2017年6月22日、韓国メーカーLGが「透明で折り曲げ可能な77型4K有機ELディスプレイ」を発表しました。
4K画質に対応しており、透過率は40%、さらに半径80mmまで丸めることができるそうです。
PCWatch(出典)http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1066931.html
これにより、ショーウィンドウや駅広告など私たちの身の回りの公告・ポスターへの用途がつぶやかれているほか、ディスプレイ一体型デスクなどへの利用も考えられます。
透明、4K画質、薄さ、柔軟性を兼ね備えたこの有機ELディスプレイの用途は無限大にあり、有機EL市場の拡大に拍車がかかるのではないでしょうか。
有機ELの市場拡大はiPhoneが大きく左右する
現在テレビ・ディスプレイ業界を大きく変えつつある有機ELですが、その市場規模はどれくらいのものになるのでしょうか?
市場動向調査企業TrendForceのディスプレイ市場調査部門「WitsView」は7月3日、
「米Appleが今秋発売する予定の新しいiPhoneの一部機種に韓Samsung Display(SDC)製の有機EL(AMOLED)パネルを採用することが報じられて以降、他の韓国および中国のスマートフォン(スマホ)メーカーやパネルメーカーは、積極的に有機ELパネルへの投資を進める動きを見せている。
このため、有機ELは近い将来、グローバルなスマホ市場で主流になるのは間違いなく、有機ELパネルのスマホへの搭載率は数量ベースで2020年までにおよそ5割に達する」
との予測を発表しました。
下記の表は、WitsViewが公開した「ディスプレイの種類別に見たスマホの出荷台数推移予測(単位:百万台)と、有機EL搭載機種の比率(%)」を表すグラフです。
TFT-LCD=液晶、AMOLED=有機EL、AMOLED Penetration Rate=有機EL搭載機種の比率
また、UBI産業リサーチは「第3回 OLED Kerea Conference」で、OLEDパネルの見通しについて、2021年に出荷量が17億台、市場規模は750億ドルを達成するとの予測を発表しました。
加えて、韓国メーカーが市場全体の80%を占め、折り曲げ可能なフレキシブル有機ELディスプレイ中心に新規投資が行われることで、有機ELディスプレイ市場の70%をフレキシブルが占めるとの予測も発表しました。
WitsView、UBI産業リサーチの見解をまとめると、「2021年に存在するスマートフォンの半分が有機EL搭載機種。
世の中で使われている有機ELディスプレイの8割が韓国メーカーの物。
そしてその有機ELディスプレイの7割が折り曲げ可能のフレキシブル化されたディスプレイ。」ということになります。
現在、日本で使われている有機ELディスプレイがLGのものであることを考えても、韓国メーカーが市場の80%を占めることはあり得るのかもしれません。
しかし、JOLEDが研究開発を行う印刷方式によって、もしかすると…ということもあるのではないでしょうか?
続々とスマートフォンに有機ELが搭載されていることや、フレキシブルディスプレイの汎用性が高いことから、他の部分はほぼ間違いないと思われます。
1つの新技術ですべてがひっくり返る。なんてこともある業界ですので、今後も注目を続けていきたいところです。
有機EL関連銘柄【有機ELディスプレイ等に関連する銘柄】
有機ELの活用例として代表されるのは、やはりディスプレイです。
テレビ・モニタ・スマホに利用される有機ELディスプレイの開発を担う企業を中心に、自動車向けの有機EL照明に関連する銘柄も含めて8銘柄ご紹介します。
[6740]ジャパンディスプレイ(JDI)
ジャパンディスプレイ(JDI)(6740)は、主にAppleへ液晶パネルを供給してきた会社で、売り上げの5割をApple向けが占めていました。
しかし、時期iPhoneには有機ELが搭載されることとなり、有機ELの実用化で先行した韓国メーカーの有機ELパネルが採用されることとなりました。
これによりJDIは大きな打撃を受け、2017年3月期には317億円の最終赤字を計上しました。
「想定より有機EL化が早く進んだ」と有賀社長は語り、JDIが有機ELを量産できるのは早くても2018年以降だそうです。
それでもAppleに供給できる生産規模ではないため、少なくとも2019年までApple向けの有機ELパネルを販売する体制は整わない見通しです。
JDI・ソニー・パナソニックの有機EL事業を統合して設立された会社JOLEDが、世界初となる印刷方式による有機ELディスプレイのサンプル出荷を発表したことで、有機EL関連銘柄として期待が高まっています。
また、2016年12月にJOLEDへの出資比率を50%超えに引き上げ、子会社化することを発表しましたが、延期のためまだ子会社化には至っていません。
発表当時は、強みである液晶関連の好材料も相まって株価は10月から動意づき、3か月で実に株価2倍もの値上がりを見せました。
これからの進展次第では、韓国メーカーとも戦える可能性を持った企業だと思うので今後も注目を続けたい銘柄です。
[6758]ソニー
ソニー(6758)は2007年に世界で初めて有機ELテレビを発売した会社です。
しかしその生産は2010年に終了し、それから7年、今年ソニーが新たな有機ELテレビを発売しました。
前述したように、画質はもちろんのこと、音、デザインにもこだわった製品となっており、他社との差別化を図っています。
画面の後ろにスピーカーを隠す設計で話題を呼び、好調な滑り出しと思われます。
また、この機会にユーザーが液晶テレビの画質、値段にも目を向けることで、現在主軸となる液晶事業の方も堅調な伸びを見せるのではないでしょうか。
しかし、言わずと知れた大企業なだけに時価総額が大きく、長期的な運用向けの銘柄となっています。
ソニーのテレビ事業にとって、有機ELが主軸となりうるのか見極めるとともに、今後も注目し続けたいと思います。
[6752]パナソニック
パナソニック(6752)もソニーと同じく、有機ELテレビを発表している会社です。
プラズマテレビ時代に培ったノウハウを活用し、ガラス面への映り込みの色にまでこだわった設計となっています。
2016年にヨーロッパで有機ELテレビの発売を行った経緯があり、他社に比べて経験と知識が豊富な印象です。
有機ELテレビに関し、ソニーとの激しい戦いを期待する声が多く、これにより有機ELテレビ全体の価格も下がるのではないかと思われます。
また、JDI・ソニーと共に「JOLED」を設立しており、こちらの実績も加味すると注目せざるを得ない銘柄ではないでしょうか。
しかし、ソニー同様大企業なだけに大きな値動きは期待できませんが、その分リスクも少ない銘柄と言えるでしょう。
[6753]シャープ
シャープ(6753)は1992年から有機ELの開発を進めており、韓国メーカーより長い歴史を持つ企業です。
今まで事業化に向けた投資を行っていませんでしたが、今後ノートPC・スマートフォン向けの技術を立ち上げ、それと並行してテレビ向け有機ELパネルの開発も行っていくそうです。
しかし、シャープにとって主力の事業はあくまで液晶としており、有機ELを本命とは捉えていないそうです。
テレビに関しては、シャープの液晶テレビは10年保証することができ、薄さに関しても有機ELテレビと同等としています。
現在、液晶テレビと有機ELテレビを比較できる場がないため、今後これを比較するためのロードショーなどを予定しているそうです。
開発は行っているものの主軸とはしないというこのスタンスを、投資家たちがどう捉えるかが株価への影響となるでしょう。
[6986]双葉電子
双葉電子(6986)は、「電子機器」「電子部品」「生産機材」の3つを主軸としている企業です。
TDKの子会社で、有機ELパネル事業を手掛ける「TDKマイクロディバイス」を双葉電子が買収したことで、一時期話題になりました。
また、有機ELデバイスの長寿命化、薄型化が可能な塗布型乾燥剤「OleDry-P2(オーレドライピーツー)」を開発し、各企業の有機EL開発を促進させました。
また、車載向け・ウェアラブル端末向け有機ELディスプレイなどの開発研究も行っており、有機ELに対して非常に積極的な印象です。
これまでの実績、現在の研究による今後の新発表に期待して、今後も注目しておきたい銘柄です。
[6773]パイオニア
今までと打って変わって、パイオニア(6773)は有機EL照明に関連する銘柄となっています。
また、1997年に世界で初めて有機ELを量産出荷しました。
主に車載機器などに搭載され、累計販売は1億4000万枚にものぼりました。
長年の研究・量産化によって豊富な技術を蓄積しているパイオニア、2017年6月7日から開催された「CESアジア2017」では、有機ELによる自動車向けランプ類を参考出品しました。
このうち、テールランプにおいて、自在に折り曲げ可能な「フレキシブル有機ELパネル」を初公開しました。
Response.jp(出典)https://response.jp/article/2017/06/15/296153.html
テールランプへの有機ELパネルは、BMWなどが実用化で先行していますが、フレキシブル化はしていません。
デザインの自由度が大幅に高まる、フレキシブル有機ELパネルによって、先行する外国勢に追いつきたいとしています。
[4902]コニカミノルタ
コニカミノルタ(4902)は、情報機器事業・ヘルスケア事業・産業用材料/機器事業を主軸とし、他にもプラネタリウム事業など、幅広い分野で活躍している企業です。
コニカミノルタパイオニア(出典)https://www.kompo.jp/
コニカミノルタは、前述したパイオニアと折半出資による合同会社「コニカミノルタ パイオニア OLED」の設立を発表しました。
「軽・薄・曲」を兼ね備えたフレキシブル有機EL照明の製造装置や量産技術を保有するコニカミノルタと、車載機器において20年に及ぶ実績を持つパイオニアが手を組んで、事業の本格立ち上げにかかりました。
両社とも、単体で充分な技術を保有しており、BMWなどの海外勢を追うパイオニアとしても、この事業提携は非常に心強いものになりそうです。
[4118]カネカ
カネカ(4118)は、有機ELパネルやパネルと回路を合わせたモジュールを手掛けている会社です。
経営破綻した東北デバイスの有機EL事業を譲り受け、今年の9月で5年になるカネカ。取締役社長 瀬崎氏は、本格的な立ち上がりは遅れたものの、やっと世間や市場に「これは使えるね」と言ってもらえるようなレベルに持って行けたと語りました。
柔らかな光で落ち着いた雰囲気を作り出す有機EL照明は、LEDにとって代わるものではなく、新しい場を作り出す製品になるそうです。
また、課題の1つであった「寿命」に関して、世界最高水準の5万時間以上を確立しました。
これは一般的な有機EL照明の2倍に相当し、LEDと同等の寿命になります。
そして、もう1つの”世界初”が、「5色に光る有機EL照明デバイス」です。
白・赤・橙・青・緑の5色に光るこの有機EL照明は、レストランやホテル等の店舗照明、高級住宅用のデザインなど、高級品市場をターゲットとして開発されました。
家電Watch(出典)http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/427076.html
”高価”なイメージのある有機EL照明ですが、カネカは有機材料の薄膜を均一に形成できる面蒸着という技術によって、生産コストを1ケタ下げる事にも成功しました。
有機EL照明デバイスにおいて、着々と多くの実績を作り上げるカネカは、投資家の間でも話題を呼んでおり、今後も目が離せない銘柄です。
有機EL関連銘柄【有機EL製造装置・技術に関連する銘柄】
「蒸着」と「印刷」の2つに分類される有機EL製造技術。その製造技術や装置に着目した9銘柄をご紹介します。
[7751]キヤノン
キヤノン(7751)の子会社「キヤノントッキ」が、蒸着装置の製造を手掛けていることから、有機EL関連銘柄として注目を集めています。
この蒸着装置は、前述した現在主流の蒸着方式に使われる装置で、有機ELの製造に欠かせない装置となっています。
有機ELの製造に欠かせないだけあって、キヤノントッキCEO津上氏が「当社の生産キャパシティーが問題で納入ができない状況は早く解消するよう、増強を進めていく」と述べるほど各国のディスプレイメーカーから注文が殺到しているそうです。
また、「キヤノントッキにとっては一生に一度の機会が訪れており、今後2~3年は市場を独占でき、他の企業がこの装置の作り方を理解したころには、有機EL市場は冬の時期に入っている。」とまで言われています。
蒸着装置において独走状態のキヤノントッキは、今後も必ず注目し続けておきたい銘柄です。
[7911]凸版印刷
凸版印刷(7911)は、蒸着方式において使われる蒸着マスクの製造を手掛けています。
蒸着マスクも、蒸着方式において必須とされています。
しかし、熱によって膨張せず、なおかつ軽いことが求められるので、大型化に難航しているようです。また、JOLEDによって印刷方式が確立され、今後一般化されると一気に需要が下がってしまうのではないかと懸念されています。
まだまだ必須とされる部品で、需要が高い蒸着マスクですが、今後技術の進歩によってどうなっていくのか注目です。
[7717]ブイ・テクノロジー
ブイ・テクノロジー(7717)は、液晶製造装置を主軸とした精密機器メーカーです。
有機EL分野においては、凸版印刷と同じく蒸着マスクを製造しています。
そして、「高精細蒸着マスク(ファイン・ハイブリッド・マスク、FHM)」と呼ばれる、従来製品より蒸着性が高く軽量な蒸着マスクの開発に成功しました。
これにより、今まで水平に設置してきたマスクを垂直に設置することができ、省スペース化が図れるとされています。
また、最初から精度が高いため、ノウハウの蓄積が無くても有機ELを作ることができる。
とアピールしており、これからの市場に影響を与えるのではないかと思われます。
凸版印刷と同じ分野でありながら、優位に見えるブイ・テクノロジー。
今後、この新製品がどれくらい普及するのかによって、株価の動きが大きく変わるのではないでしょうか。
[6728]アルバック
アルバック(6728)は、真空装置を主軸とし、半導体、液晶、有機EL成膜装置などの事業も展開しています。
真空技術に強みをもっており、産業だけでなく研究機関にも採用されている実績を持っています。
その真空技術を用いて有機EL成膜装置を手掛けており、中国とも強い関係を持っていることから、アジア圏を中心にグローバルな事業展開が期待できる企業です。
テレビの需要次第で事業環境が浮き沈みすることに危機感を持っており、現在有機ELパネルをもう一つの柱にしようと、有機EL関連の受注を3倍に増やしました。
液晶パネルで培ったノウハウや設備を生かして、利益率の引き上げに力を入れるとのことです。
[6384]昭和真空
昭和真空(6384)は、上記のアルバックグループ系列の会社です。
有機ELは、電子を持った普通の素子と、不安定な状態の素子を再結合させることで、光を生み出しています。
この有機EL素子の構造を最適化する装置「Various」を手掛けており、これにより有機EL素子の研究開発がスピーディに行えるそうです。
有機ELはまだ普及しているとは言いがたく、現在も性能の向上やコスト削減において研究開発が行われているので、今後も充分に需要が見込めるのではないでしょうか。アルバックとのセットとして頭の隅においておきたい銘柄です。
時価総額75億円と大きくなく、材料によってはテーマ株らしい動きを見せてくれるのではないかと思われます。
[6266]タツモ
タツモ(6266)は、スマートフォンやタブレット端末に使われる半導体の製造装置や、電子機器の液晶ディスプレイ製造装置を主力とする会社です。
特に液晶カラーフィルター用塗布装置においては世界トップシェアの実績を誇っています。
半導体・液晶製造装置を主力としながらも、有機EL分野において着実に事業を拡大しており、有機ELディスプレイ国家プロジェクトにも参画し、高効率・高演色の有機EL照明の開発なども推進させています。
液晶ディスプレイの分野において大きな実績を持っているメーカーなので、有機EL分野への事業拡大も期待が高まっており、注目の銘柄と言えるでしょう。
[6641]日新電機
日新電機(6641)は、電力用コンデンサやイオン注入装置を主力とした、中堅重電メーカーです。
主力である電力用コンデンサとイオン注入装置において世界シェア100%、その他製品でも高シェアを誇っています。
世界シェア100%を誇るイオン注入装置は、スマホ用小型液晶・有機ELの製造工程に必要不可欠な装置で、国策として液晶を強化している中国や、有機ELへの移行を進める日韓メーカーからの受注が非常に多く入っています。
今後、この流行と需要がいつまで続くかが重要となってきますが、今熱い有機ELに不可欠な装置で世界シェア100%を握っていることは、非常に大きな好材料になるのではないでしょうか?
[8035]東京エレクトロン
東京エレクトロン(8035)は、半導体製造装置やFPD製造装置を手掛けており、半導体製造装置では世界シェア4位を誇っています。
FPDとは「Flat Panel Display:フラットパネルディスプレイ」の略で、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの総称として使われます。
精密機器メーカー「セイコーエプソン」と共同開発により、インクジェット描画装置を開発したことで、有機EL関連銘柄としての注目が高まりました。
また、有機EL製造装置の量産化も進めており、有機ELブームの波に綺麗に乗っている銘柄です。
有機ELの流行によって液晶との比較の機会が多くなることで、性能の違いを踏まえての価格から、あえて液晶を選ぶ消費者も多くなると思われるので、液晶関連の事業も堅調に進んでいくのではないでしょうか。
[6258]平田機工
平田機工(6258)は、自動車生産設備や半導体生産設備の製造・販売を主軸とした会社です。
主力の事業を見てみると、一見有機ELとの関連性が高いとは思えませんが、有機ELディスプレイ関連設備の製造受託も行っており、連結子会社で有機EL照明の研究を行っている「KOYA」を吸収合併していることから、有機EL関連銘柄として注目が集まっています。
また、九州大学と共同で有機EL製造装置の研究を行っていることから、今後の有機EL関連事業の強化に期待が高まっています。
有機EL関連銘柄【有機EL部材・部品に関する銘柄】
日本の有機EL技術、研究を下支えしている部材・部品メーカー。有機ELの要と言っても過言ではない、この部材・部品に関連した8銘柄をご紹介します。
[4112]保土谷化学工業
保土谷科学工業(4112)は、染料やソーダ科学を事業の主軸とする会社で、近年では機能性樹脂や電子材料も手掛けています。
有機ELの材料分野で注目されており、「蛍光型」と呼ばれる青色発光材において世界で高いシェアを誇っているほか、発光効率が高く、省エネ性能が格段に向上すると言われている「リン光型」の研究開発も現在推進しています。
また、「われわれは材料屋であり、供給先を絞るようなことはしない」として、韓国のサムスングループと業務提携を結びました。次期iPhoneにも有機ELが搭載されることが分かっており、Appleがサムスンに有機ELディスプレイを大量発注していることから、保土谷化学工業にも大きな恩恵があるのではないかと思われます。
[5216]倉元製作所
倉元製作所(5216)は、FPDにおいて「切る」「磨く」「成膜する」を手掛ける会社です。
中でも有機EL関連として注目されているのは「成膜する」技術です。
前述したように、現在有機ELを付着させる方法として、蒸着方式が主流とされています。
倉元製作所はこれまでの液晶事業で培った「低抵抗ITO成膜技術」と「高精度研磨技術」の融合より、透明度が高くなめらかな加工を実現させました。
時価総額が35億円と非常に小さく、株価が動きやすい銘柄ではないでしょうか。
現在注目の集まっている有機EL関連銘柄として好材料が見つかれば、急騰も見込めるかもしれません。
[4005]住友化学
住友化学(4005)は、住友グループの大手総合化学メーカーで、国内化学メーカーとして三菱ケミカルホールディングスに次いで第2位を誇っています。
住友化学は、現在主流の蒸着方式ではなく、生産コストを削減できる印刷方式に目を付け、この方式に適した新材料を発表しました。
これにより蒸着方式より工程が少なく、無駄になる材料が少ない印刷方式を実現し、コストを50%カットすることに成功しました。
JOLEDがサンプル出荷した医療用ディスプレイに使用されており、2019年から量産する計画です。
今後、日韓の大手パネルメーカーに供給することで印刷方式が広がり、有機EL自体の普及・低価格化に繋がると思われます。
[4188]三菱ケミカルホールディングス
三菱ケミカルホールディングス(4188)は、三菱グループの持ち株会社で、国内最大の総合化学メーカーです。
住友化学と同じく、印刷方式に適した新材料の開発をしていることから、有機EL関連銘柄として注目されているほか、モバイル向けのバンク材(隔壁在)を手掛けていることも理由の一つとなっています。
有機ELディスプレイの画素を区切るバンク材ですが、現在これは透明の物が使われています。
一方、三菱ケミカルHDが採用を目指すバンク材は黒色で、これにより光の反射防止が可能になりました。
印刷方式においては住友化学にリードを許した三菱ケミカルですが、現在主流である蒸着方式に対応した黒色バンク材で、まずモバイル分野への採用を目指す計画です。
[4208]宇部興産
宇部興産(4208)は日本の大手総合化学メーカーで、化学製品だけでなくセメントや石炭なども供給しているという特徴を持っています。
電子回路を焼き付けるためのフィルム開発をしており、これが2016年6月23日に放送されたテレビ番組「ワールドビジネスサテライト」で紹介されたことで人気化した出遅れ銘柄です。
従来の液晶の回路にはガラスが使われていましたが、有機ELに使われる基盤は軽くて柔らかい「ポリイミドフィルム」と呼ばれるフィルムが使われています。
回路を焼き付ける際の温度は400度以上となり、通常のフィルムでは形状を保つことはできませんが、宇部興産の開発したフィルムは500度以上の高熱にも耐えうるとしています。
実際に、宇部興産が開発したポリイミドフィルムと他社の製品を500℃で熱したところ、他社のフィルムは粉々になり形状を維持できませんでしたが、宇部興産の開発したポリイミドフィルムは形状を保ったままでした。
AppleがiPhoneに有機ELを採用することで、このフィルムを通して事業の大きな拡大につながるのではないかと期待されています。
[4364]マナック
マナック(4364)は、海水化学をルーツとして化学薬品の製造・販売を行っており、難燃材料や電子材料も手掛けている会社です。
電子材料分野において、コピー機・プリンターなどの感光ドラムに使用される原料や有機ELディスプレイ用の情報記録材の原料を製造していることから、有機EL関連銘柄として見られています。
大きな材料はありませんが、各メーカーの有機EL事業を下支えすることで堅調な成果を出している企業です。
時価総額が45億円と非常に小さいので、有機ELの普及とともに株価の値上がりも期待したいところです。また、万一新技術などの発表があれば急騰も見込めるのではないでしょうか。
[4960]ケミプロ化成
ケミプロ化成(4960)は、紫外線吸収剤・プラスチック添加剤などが主力の総合化学メーカーです。
主力の一つである紫外線吸収剤においては、国内トップシェアを誇っています。
蛍光・リン光の発光材料や電子輸送材料を得意分野としており、十数年前から有機ELの研究開発を行っています。
長年にわたる研究開発で培ったノウハウを活用すべく、2014年に有機ELの研究拠点となる工場を新設しました。
「有機EL分野を本業である紫外線吸収剤に次ぐ収益の柱に育てる」としており、有機EL事業に積極的と見受けられます。
多数の特許を出願していることから好材料が期待でき、時価総額が65億円と小さいので有機EL関連銘柄の中でも本命銘柄に入る企業です。
[5019]出光興産
出光興産(5019)は、石油の精製・販売を行っている企業ですが、1980年代に石油事業への依存度を下げるための多角化により、有機EL事業を始めました。
また、有機EL材料を開発する子会社をスイスに新設するほか、韓国大手メーカーLGと提携を結んでおり、2017年7月には特許を相互利用することも発表しました。
LGとの業務提携は2009年に結ばれており、非常に深い仲にあるため、出光興産の有機EL材料はサムスンのスマートフォンにも使われていると思われます。
出光興産は、「有機EL材料の中でも発光エネルギーが大きく、物質にかかる負担が重いために寿命が短い」とされている青色材料において多くの特許を出願しています。
一方LGは有機ELパネルの量産体制も整っており、世界各国に幅広く提供していることから、両社とも有機ELの研究開発において大きく躍進するのではないかと思われます。
まとめ
まだまだ話題の渦中にある有機EL関連銘柄。現在も研究開発が行われていることもあり、新技術の発表に期待がかかります。また、現在物色されている銘柄以外にも多くの有機EL関連銘柄が存在すると思われます。
モバイル分野ではiPhoneが大きく関係し、テレビ分野ではLGが大きく関係することが、銘柄選定の大きなヒントとなるのではないでしょうか。
海外勢に押され気味な日本企業ですが、消費者としても、投資家としても、有機ELの今後の発達に期待したいですね。