東京オリンピックやラグビーワールドカップをはじめ、2019年以降はインバウンド効果が期待できるイベントが盛りだくさんでした。
インバウンド効果とは、海外からのお金(外貨)を獲得することで、国内で循環するお金が潤うこと。
販売機会損失を防ぐためのキャッシュレス決済普及や、外国人が日本で働きやすくするための入管法改正など、日本では官民一体となってインバウンド対策に取り組んできています。
また、インバウンド関連銘柄と言えば、これまで化粧品やホテルや免税店などが定番とされてきました。
インバウンド株は新型コロナウイルス感染症が拡大し、訪日外国人による“消費”や“移動”の恩恵を受けていた企業は大きな打撃を受けることとなりましたが、感染者数が減少してからは再び需要も回復傾向となり、改めて注目されてきています。
このページでは、インバウンド株について、“消費”と“移動”に着目したインバウンド株の比較や、訪日外国人が増加に伴って恩恵が期待できる関連銘柄をまとめご紹介します。
目次
インバウンドとは?訪日外国人の“消費”と関連株への影響
訪日外国人による消費活動を意味する「インバウンド消費」。
中国人観光客による“爆買い”は、まだ記憶に新しいのではないでしょうか?
「インバウンド」という言葉が大きな話題となったのは、この中国人観光客の爆買いがニュースなどで取り沙汰されたことが大きな要因として挙げられるでしょう。
ここでは、インバウンド消費がどのように株価に影響を与えるのかを、実際に株価が13倍にも急騰したインバウンド銘柄を例にご紹介します。
インバウンド消費とは?
日本へ旅行に来た外国人が買い物や移動、サービスにお金を払うことを「インバウンド消費」と呼びます。
つまり、日本で働いて稼いだお金ではなく、海外からのお金(外貨)を獲得することで、国内で循環するお金が潤うことになります。
近年、日本では所得の減少や価値観の変化などにより、お金を使うことに対してあまり積極的ではなくなっています。
さらに、今後少子高齢化が進むと労働者人口が徐々に減るため、日本国内のみで消費の大幅な上昇はあまり見込めません。
一方、訪日外国人は、滞在するだけでも宿泊費・食費・交通費などでお金を使ってくれるため、大袈裟に言うと外国人を呼び込むだけで経済効果が期待できます。
インバウンド消費によって様々な企業が恩恵を受けると、もちろん株価にも大きな影響を与えます。
次は、具体例として実際にインバウンド株として株価が13倍にも急騰したラオックス(8202)を見てみましょう。
過去に株価13倍の急騰を見せたインバウンド関連株「ラオックス(8202)」
ラオックス(8202)は、秋葉原を中心に展開する免税店大手で、経営難だった2009年に中国資本の傘下に入り、中国人観光客への販売に力を入れることで業績を回復した企業です。
この業績回復に伴い、ラオックスはインバウンド関連銘柄の本命株として注目され、当時420円だった株価はなんと約13.4倍の5,640円まで急騰しました。
“爆買い”ブームに乗って、まさに株価も“爆上げ”を演じました。
この時、100株だけ買っていたとしても52万円もの利益を狙えたことになります。
100万円の資金余力があれば、2,300株の購入で1,200万円もの利益を得るチャンスだったと言うことです。
アフターコロナ環境下で再び訪日外国人が増加しインバウンド消費が再び増加傾向にある中、2024年8月、日本百貨店協会は、全国にある百貨店の2024年1月から7月までの免税売上高の合計が過去最高だった2023年1年間の免税売上高を7カ月間で上回ったことを発表。
さらに日本政府観光局によると、7月の訪日外国人旅行者数は推定で329万2500人となり、単月としては過去最高。上半期(1~6月)のペースが下半期も続けば「2024年通年の旅行者数は3500万人、消費額は8兆円も視野に入る」との声も。
企業は日本に訪れる外国人の心とお金を掴み、投資家は相場に訪れる利益のチャンスを掴む。
しかし、相場の流れに上手く乗るには、関連報道を日々チェックするなど事前の準備が大切です。
インバウンド需要回復の波を乗りこなすためにも、注目すべきインバウンド関連銘柄は一通り把握しておきましょう。
【インバウンド関連銘柄】注目の本命・出遅れ株
東京オリンピックやラグビーW杯などのイベントでインバウンド効果が期待された地域の鉄道・ホテルを中心に、全国的に恩恵を受けるであろうインバウンド関連銘柄をご紹介します。
証券コード | 企業名 | 概要 |
---|---|---|
9020 | 東日本旅客鉄道 (JR東日本) |
国内最大の鉄道会社で世界でもトップクラス。 流通・サービスや不動産・ホテルなども展開。 |
9001 | 東武鉄道 | 関東民鉄路線最長。子会社に東武百貨店やスカイツリーがあり、東武動物公園、金谷ホテルなど観光関連が充実。 |
9009 | 京成電鉄 | 都心から羽田空港、成田空港への空港アクセスを担う。バス、百貨店、不動産業なども展開。オリエンタルランドの筆頭株主。 |
9003 | 相鉄ホールディングス | 神奈川地盤の鉄道会社。 流通業やホテル業も行う。都心乗り入れで厭戦イメージを拡大。 |
9021 | 西日本旅客鉄道 (JR西日本) |
西日本の2府16県にて鉄道網を手掛ける。 流通や不動産、ホテルなども展開。 |
9042 | 阪急阪神HD | 関西私鉄大手。傘下に阪急電鉄、阪神電鉄、阪急交通社などがあり、不動産や国際物流に加えプロ野球、宝塚歌劇なども展開。 |
9045 | 京阪HD | 大阪、京都、滋賀で鉄道とバスを運営 不動産賃貸・販売、京阪百貨店やスーパーなども展開。 |
8920 | 東祥 | 愛知地盤でスポーツクラブを運営している会社だが、ホテル事業として「ABホテル」を手掛ける。 |
9713 | ロイヤルホテル | 関西の名門ホテル。高級ホテル「リーガロイヤル」を展開。大阪を中心に全国で11ホテルを運営。2022年春に「リーガロイヤル ラグーナ・グアム・リゾート」を開業予定。 |
9731 | 白洋舎 | クリーニング国内最大手。ホテルやレストラン向けにリネンサプライ(シーツやタオル類などのレンタル)も手掛ける。 |
9603 | HIS | 海外旅行が主力の旅行会社大手。進出国数は業界トップ。ハウステンボス、運輸事業、ホテル事業なども手掛ける。 |
2331 | 綜合警備保障(ALSOK) | 常駐警備は国内トップシェア。「ポケトーク」の販売や「ALSOKマルチQR決済ソリューション」の提供を行う。 |
3030 | ハブ | ウイスキーが主体の英国風パブ「HUB」を運営。スポーツイベント期間中に利用客が増加する傾向がある。 |
8202 | ラオックス | 外国人旅行者向けの免税店を展開。新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要の回復を見込めず、全国にある13店舗のうち7店舗を閉店することを発表している。 |
関連テーマとして「インバウンド」が挙げられる銘柄は他にもまだまだたくさんあるかと思いますが、ざっとインバウンド関連銘柄を14銘柄ご紹介してみました。
新型コロナウイルスの影響で東京オリンピック開催に伴うインバウンド需要を取り込めなかったのは日本にとって大きな打撃となった印象ですが、感染者数が減少した今、再び訪日外国人が増加しインバウンド需要が回復に向かうことを期待したいですね。
インバウンド関連銘柄は“国策テーマ”
「国策に売りなし」という相場格言があるように、国策に準じている関連株は、他のテーマ以上に期待・注目されます。
国策の発表や進み具合を材料に株価が動くことも多々あるため、インバウンド株に関連する政策は把握しておきたいところです。
消費増税対策「キャッシュレス決済で5%還元」
消費増税対策として話題になった「キャッシュレス決済で5%還元」は、日本でキャッシュレスを普及させたいという政府の考えが読み取れます。
「訪日外国人旅行者が不満に思ったところ」に関する観光庁の調査では、「クレジット、両替に関する不満」が4番目に挙げられるほどで、現金を使わないキャッシュレス決済の普及が求められてきていることが分かります。
少額な買い物のために両替が必要となると、買い物を見送ることも少なくはないでしょう。
つまり、お店側としては、本来得られるはずだった利益が得られない「機会損失」になります。
この機会損失を無くし、しっかり利益に変えることでインバウンド消費の増加が期待できます。
入管法改正・外国人労働者受け入れ拡大
インバウンドが期待できる国策の1つとして、「入管法改正」があります。
改正入管法は、少子高齢化に伴う人手不足を解決すべく、2つの在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れを拡大するというものです。
これにより、受け入れ可能な業種が大幅に増え、より多くの外国人が日本で働きやすくなります。
外国人が日本で働くとなると、家賃や食費など普段の生活費がインバウンド消費として国内へお金が流れます。
つまり、長期的なインバウンドが期待できる上、内需拡大に貢献するものと思われます。
国策の他に材料となるのが、外国人が日本へ来る“キッカケ”です。
2019年以降は、外国人が日本へ訪れるキッカケとなるイベントが多かった印象ですが、2025年には大阪万博も開催される予定ですので、キッカケとなる国際的なイベントが日本国内で行われることで、日本でお金を使ってくれる訪日外国人の増加が期待されます。
インバウンド株は“消費”から“移動”へ?
インバウンドに関連する株といえば、ホテルや化粧品、家電量販店を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
しかし、最近では“消費”よりも“移動”に重視したインバウンド株の方が穴場ではないかとの見方が強まっています。
そこで、ここでは“消費”で恩恵を受ける業種と、“移動”で恩恵を受ける業種の株価推移を比較してみましょう。
- 家電量販店
- ホテル・旅館
- ドラッグストア
- 化粧品
- 百貨店
- 鉄道
- バス
- 飛行機
- タクシー
今回注目するのは、インバウンド株の中でもディフェンシブ性の高い鉄道セクターです。
インバウンド関連の定番とされる化粧品や旅行代理店のPBRが2倍超なのに対し、鉄道セクターのPBRは1.5倍と低水準。
逆に、売上高営業利益率は15%と高い水準を誇っています。(※コロナ禍前時点)
さらに、JR東日本(9020)をはじめとする時価総額上位4社の株価推移と日経平均を比較しても、鉄道セクターは日経平均を大きく上回っており、その堅調な値動きが見て取れました。
インバウンド関連銘柄の本命株 東日本旅客鉄道(9020)
同じように、丸井グループ(8252)率いる時価総額上位4社の百貨店を見てみると、日経平均を下回っていることが分かります。
また、“消費”によるインバウンド効果が高まれば高まるほど、“移動”で鉄道セクターも恩恵を受けるはずです。
これまでの定番銘柄はもちろん注目すべきですが、それらに加えて移動手段に重点を置いた銘柄選定をしてみるのもアリではないでしょうか。
国際イベントを控え注目を集める『インバウンド関連株』株価急伸が期待される本命 ⇒ 出遅れ株の初動を掴むには?
ここまで、インバウンドとは?といった基本的な部分から、具体的な関連銘柄、インバウンド関連株が注目される理由などをご紹介してきました。
これから訪れるインバウンドの波は、新型コロナウイルスがこのまま収束するかどうかによりますが、収束した際はまた国際イベント開催などで盛り上がることが期待されます。
しかし、そもそも“上がる株”を見つけることができなければ意味がありません。
つまり、インバウンド株が本格的に上昇し始める前に仕込むことが大切になります。
そこで、有効な方法の1つとしてご紹介するのが「投資顧問(株情報サイト)」です。
自分の保有銘柄について質問することができるだけでなく、アナリストが厳選した短期急騰候補株などを手にすることができるため、そのメリット・アドバンテージは個人の力とは比べ物になりません。
インバウンドの波が押し寄せる前に、是非投資キャリアが豊富なアナリストの力を試してみてはいかがでしょうか?