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- 初回投稿日:2024/4/30
- 更新:2025/5/12
トランプ政権の関税措置をめぐる日米交渉で注目が集まる造船業界。
今回は造船関連銘柄の中でも人気の本命株、注目の出遅れ株の一覧・詳細説明も記載しているので、銘柄選定のお役に立てればと思います。
日本の造船技術

出典:Global shipbuilding market share (1960–2020)
日本は長い造船の歴史を持ち、戦後の高度経済成長期には世界最大の造船大国として知られていました。特に1960年代から1980年代にかけては、大型タンカーや貨物船の建造で世界のトップシェアを誇り、世界の海運業を支える重要な役割を果たしてきました。
しかし、1990年代以降、中国や韓国の急成長により日本の造船シェアは次第に縮小。それでも、日本の造船業界は高い技術力と品質管理能力を武器に、特殊船や高付加価値船の分野で存在感を維持しています。
2025年現在、日本の造船業界は環境規制に対応した低炭素船や省エネルギー技術、LNG(液化天然ガス)燃料船などの開発に力を入れており、依然として世界市場で重要な地位を占めています。また、AIやIoTを活用したスマートシップの開発など、新技術への取り組みも進んでいます。
造船株と海運株との関係性
基本的に、海運株の業績が好調であれば、それに伴って新造船需要も高まり、造船株にも追い風となる傾向があります。これは、海運会社が好業績を上げると、保有船舶の増強や老朽船の代替を進めるため、新たな船舶建造を発注することが多いためです。
さらに、世界経済の回復や貿易量の増加、エネルギー需要の拡大が重なると、コンテナ船やタンカー、バラ積み船の需要が増加し、それに伴って造船業界にも追い風が吹きます。また、IMO(国際海事機関)の環境規制強化や炭素排出削減目標の設定も、新たな省エネルギー船や低炭素船の需要を生む要因となります。
一方で、海運市況が低迷すると、船舶の新造需要が減少し、造船企業にとっては逆風となる可能性もあります。そのため、造船株と海運株は時に密接に連動することもありますが、時に逆の動きを見せることがあるため、両者の関係性を把握することは重要といえます。
造船関連銘柄が物色されるとき
造船業界は、世界経済の動向やエネルギー価格、海運需要などの影響を強く受ける業界であり、その時々の国際的な動向に大きく左右されます。造船関連銘柄が物色される背景にはいくつかの要因があります。
IMOは船舶から出る温室効果ガスを2050年ごろまでに実質ゼロに
IMO(国際海事機関)は2023年に「船舶から出る温室効果ガスを2050年ごろまでに実質ゼロに」という目標を採択。目標達成に向けて、造船業界は脱炭素化への取り組みを加速させており、内航海運や国際海運でゼロエミッション船の実証実験や技術開発が進められています。これにより、低炭素船やゼロエミッション船の需要が急増しており、これに対応できる技術力を持つ日本の造船メーカーが注目されています。
海運業界全体の需要
海運業界全体の需要は、新型コロナウイルス感染症の影響が薄まり、2021年以降回復傾向にあります。世界的な経済回復に伴い、海運業界全体の需要が回復しつつあり、それに伴って新造船の需要も増加しています。特に、アジア地域の経済成長が顕著であり、日本の造船企業もその恩恵を受ける可能性があります。
特殊船舶の需要
海底資源の開発や海洋エネルギーの活用が進む中で、それに対応する特殊船舶の需要も増加傾向にあります。例えば海洋インフラの拡大、再生可能エネルギーの導入、海洋資源開発などの要因で急激に増加しています。特に、クレーンバージや浚渫船などの特殊船は、海洋インフラの建設やエネルギー需要に対応するために需要が高まっています。これにより、特殊用途に強みを持つ造船メーカーや、関連する設備メーカーにも注目が集まっています。
トランプ米政権との関税交渉
2025年4月に米国のトランプ政権が発表した「相互関税」政策も、造船業界に影響を与えています。日本政府は関税の包括的な見直しを求め、アメリカとの間で新たな交渉に乗り出しており、「日米関税交渉」状況が細かく変わっていくため、その都度株式市場も反応している状態。切り札は「日本の造船技術」という話もあり、内容次第で造船業界が今後どうなっていくのか注目されています。
その他
他にも、以下のようなケースで造船関連銘柄が物色されることがあります。
- 原油価格の上昇に伴うタンカー需要の増加
- バラ積み船やコンテナ船の運賃上昇
- 海上防衛力強化に伴う軍艦や巡視船の需要増
- 世界的なインフラ投資拡大による船舶需要の増加
造船関連銘柄【人気の本命株】
証券コード | 企業名 | 概要 |
---|---|---|
5411 | JFEホールディングス | 傘下のジャパン マリンユナイテッドを通じてタンカーやコンテナ船などの大型商船の建造 |
7011 | 三菱重工業 | LNG運搬船や防衛関連艦艇の建造に注力。環境対応型船舶も開発 |
7012 | 川崎重工業 | 潜水艦やLNG運搬船の建造に強み。環境対応型船舶も開発 |
7013 | IHI | 造船事業から撤退しているがジャパン マリンユナイテッドを通じて造船事業に関与 |
7014 | 名村造船所 | 中大型商船の建造に強み。環境対応型船舶も開発 |
7018 | 内海造船 | フェリーやRORO船などの新造船事業を中心に船舶の修繕や陸上事業も展開 |
造船関連銘柄 本命株 JFEホールディングス(5411)

JFEホールディングス(5411)は、JFEスチール、JFEエンジニアリング、JFE商事を傘下に収める持株会社で、鉄鋼、自動車用高級鋼板、エンジニアリング事業などを展開しています。造船事業では、IHIとの合弁会社であるジャパン マリンユナイテッド(JMU)を通じて、タンカー、コンテナ船、バルクキャリアなどの大型商船の建造を手がけています。JMUは、国内トップクラスの建造能力と技術力を有しており、環境対応型船舶の開発にも注力しています。今後も、JMUを通じて造船業界におけるプレゼンスを維持し、持続可能な社会の実現に貢献していく方針です。
造船関連銘柄 本命株 三菱重工業(7011)

三菱重工業(7011)は、日本を代表する総合重機メーカーで、エネルギー、航空・宇宙、防衛、造船など多岐にわたる事業を展開しています。造船分野では、長崎造船所を中心に、LNG運搬船や自衛隊向け艦艇の建造に注力しています。特に、環境規制強化に対応するため、低炭素排出型のLNG運搬船や次世代型艦艇の開発を進めており、2025年3月期には売上収益が前期比7.9%増の5兆271億円、事業利益が同35.6%増の3,831億円と大幅な増収増益を達成しました。今後も、環境対応技術の強化と防衛関連需要の取り込みを図り、持続的な成長を目指しています。
造船関連銘柄 本命株 川崎重工業(7012)

川崎重工業(7012)は、船舶、鉄道車両、航空機、モーターサイクルなど多岐にわたる製品を手がける総合重機メーカーです。造船分野では、神戸工場を拠点に、潜水艦やLNG運搬船の建造に注力しています。特に、防衛省向けの潜水艦建造では高い技術力を有しており、国内外での評価も高いです。また、環境規制強化に対応するため、低炭素排出型のLNG運搬船や次世代型船舶の開発にも取り組んでいます。2025年3月期には、売上収益が前期比15.1%増の2兆1,293億円、事業利益が同209.8%増の1,431億円と過去最高を更新し、ROEも13.2%に上昇しています。今後も、環境対応技術の強化と防衛関連需要の取り込みを図り、持続的な成長を目指しています。
造船関連銘柄 本命株 IHI(7013)

IHI(7013)は、資源・エネルギー、社会インフラ、産業機械、航空・宇宙・防衛の4つの事業分野を中心に展開する総合重工業メーカーです。かつては自社で造船事業を行っていましたが、現在はJFEホールディングスとの合弁会社であるジャパン マリンユナイテッド(JMU)を通じて造船事業に関与しています。JMUは、タンカー、コンテナ船、バルクキャリアなどの大型商船の建造に強みを持ち、国内トップクラスの建造能力と技術力を有しています。IHIは、JMUを通じて、環境対応型船舶の開発や建造に取り組んでおり、今後も造船業界におけるプレゼンスを維持していく方針です。
造船関連銘柄 本命株 名村造船所(7014)

名村造船所(7014)は、1911年創業の中堅造船メーカーで、タンカー、バルクキャリア、コンテナ船などの中大型商船の建造に強みを持っています。函館どつくや佐世保重工業などの子会社を通じて、船舶の修繕や鉄鋼構造物の製造・販売も手がけています。2025年3月期第3四半期決算では、新造船事業を中心に大幅な増収増益となり、売上高1,207.21億円(前年同期比24.5%増)、営業利益238.14億円(同103.8%増)を達成しました。今後も、環境対応型船舶の開発や高付加価値船の建造に注力し、競争力の強化を図っていく方針です。
造船関連銘柄 本命株 内海造船(7018)

内海造船(7018)は、フェリー、RORO船、コンテナ船、プロダクトタンカー、自動車運搬船などの新造船事業を中心に、船舶の修繕や陸上事業、サービス事業を展開する造船メーカーです。親会社である内海造船株式会社が新造船事業と修繕船事業を担い、子会社が陸上事業やサービス事業を担当しています。各事業本部は、取り扱う製品・サービスについて国内の包括的な戦略を立案し、事業を推進しています。今後も、環境対応型船舶の開発や高付加価値船の建造に注力し、競争力の強化を図っていく方針です。
造船関連銘柄【注目の出遅れ株】
証券コード | 企業名 | 概要 |
---|---|---|
4617 | 中国塗料 | 船舶用塗料で国内トップシェア、環境対応型製品の開発にも注力 |
6016 | ジャパンエンジンコーポレーション | 環境対応型舶用エンジンを製造 |
6018 | 阪神内燃機工業 | 中小型舶用エンジンの製造・販売を手がけており、省エネ・環境対応型エンジンの開発にも注力 |
6022 | 赤阪鐵工所 | 船舶用ディーゼルエンジンの製造・販売 |
6637 | 寺崎電気産業 | 船舶用配電制御システムや機関監視制御システムの製造・販売 |
6814 | 古野電気 | 船舶用電子機器の総合メーカー。船に搭載する電子機器で高い世界シェア |
6850 | チノー | 計測制御機器やセンサの製造・販売 |
7003 | 三井E&S | 船舶用ディーゼルエンジンや港湾クレーンなどの製造に注力 |
7021 | ニッチツ | 舶用機器の製造 |
7721 | 東京計器 | 船舶用機器や防衛・通信機器の製造・販売 |
造船関連銘柄 出遅れ株 中国塗料(4617)

中国塗料(4617)は、1917年創業の総合塗料メーカーで、船舶用塗料分野において国内トップシェア(約60%)を誇り、世界でも第2位のシェアを有しています。同社は、船底部の防汚塗料や各種タンクを腐食から守る防食塗料など、船体のあらゆる部位に対応した製品を供給しており、特に環境対応型製品の開発に注力しています。2025年3月期の連結業績では、売上高1,311.52億円(前期比12.9%増)、営業利益153.81億円(同26.2%増)と大幅な増収増益を達成しました。これは、主力の船舶用塗料事業が好調で、特に韓国での新造船向け大型案件が寄与したことや、製造コストに見合った販売価格の適正化、高付加価値製品の拡販によるものです。また、2021年には今治造船と正栄汽船から出資を受け、環境対応に関する共同研究で業務提携を行うなど、持続可能な社会の実現に向けた取り組みも進めています。このように、中国塗料は造船業界における重要なサプライヤーとして、環境対応型製品の提供を通じて業界の発展に貢献しています。
造船関連銘柄 出遅れ株 ジャパンエンジンコーポレーション(6016)

ジャパンエンジンコーポレーション(6016)は、舶用内燃機関の製造・販売を手がける企業で、特に大型低速2ストロークエンジンの分野で高い技術力を有しています。2025年4月には、次世代船舶向けゼロエミッション燃料であるアンモニアの混焼運転を開始し、環境対応型エンジンの開発を加速させています。
造船関連銘柄 出遅れ株 阪神内燃機工業(6018)

阪神内燃機工業(6018)は、中小型舶用エンジンの製造・販売を手がける企業で、省エネ・環境対応型エンジンの開発にも注力しています。内航船向けの低速4サイクルディーゼルエンジン「LHシリーズ」や、そのロングストローク版「LH-Lシリーズ」があり、これらは高効率で低燃費、低振動・低騒音を特徴としています。これらの製品は、内航船市場で高いシェアを誇り、阪神内燃機工業の技術力と環境対応への取り組みを示しています。2023年には製造した主機関の台数が12,000台に到達しています。
造船関連銘柄 出遅れ株 赤阪鐵工所(6022)

赤阪鐵工所(6022)は、船舶用ディーゼルエンジンの製造・販売を手がける企業で、1910年に創業されました。貨物船やタンカー向けの4ストロークエンジン、貨物船・ケミカルタンカー向けの2ストロークエンジンなどがあり、国内外で高い評価を受けており、特に漁業用船舶向けのエンジンで高いシェアを誇っています。
造船関連銘柄 出遅れ株 寺崎電気産業(6637)

寺崎電気産業(6637)は、船舶用配電制御システムや機関監視制御システムの製造・販売を手がける企業で、造船市況の好調を背景に業績が伸長しています。2025年3月期第3四半期決算では、売上高413.5億円(前年同期比8.3%増)、営業利益39.12億円(同19.2%増)と増収増益となりました。
造船関連銘柄 出遅れ株 古野電気(6814)

古野電気(6814)は、船舶用電子機器の総合メーカーで、魚群探知機や船舶レーダーなどを取り扱っており、あらゆる「船に搭載する電子機器」について、高い世界シェアを持つトップメーカーとして君臨しています。2025年2月期には、商船向け機器販売と保守サービスが好調に推移し、売上高1,269億円(前年比10.5%増)、営業利益131億円(同102.1%増)と大幅な増収増益を達成しました。
造船関連銘柄 出遅れ株 チノー(6850)

チノー(6850)は、計測制御機器やセンサの製造・販売を手がける企業で、船舶用機器の分野でも製品を提供。2020年に船舶用計測器メーカーの明陽電機を子会社化しています。特に、記録計や調節計、温度センサなどの製品は、船舶の安全運航や環境対応に貢献しています。
造船関連銘柄 出遅れ株 三井E&S(7003)

三井E&S(7003)は、かつて造船事業を手がけていましたが、2021年に艦艇事業を三菱重工業に譲渡し、玉野事業所での新造船事業を終了しました。現在は、船舶用ディーゼルエンジンや港湾クレーン、舶用機器の製造・販売に注力しており、環境対応型の製品開発や生産効率の向上を図っています。
造船関連銘柄 出遅れ株 ニッチツ(7021)

ニッチツ(7021)は、舶用機器や産業機器の製造・販売を手がける企業で、特に舶用機器部門では、国内造船所からの需要回復に伴い、操業が回復基調にあります。工事量増加に対応して生産体制の再構築や業務効率化を進めるとともに、スポット工事の積極的な取り込みに努めています。
造船関連銘柄 出遅れ株 東京計器(7721)

東京計器(7721)は、船舶用機器や防衛・通信機器の製造・販売を手がける企業で、特に航海計器の分野で高い技術力を有しています。2025年3月期第3四半期決算では、船舶港湾機器事業と防衛・通信機器事業の好調が業績を牽引し、売上高342.41億円(前年同期比11.5%増)、営業利益10.54億円(同527.1%増)と大幅な増収増益を達成しました。
造船関連銘柄まとめ
造船関連銘柄は、世界経済の動向やエネルギー価格、環境規制など、さまざまな要因に大きく影響を受ける業界です。
これらの要因を踏まえた上で、造船関連銘柄は中長期的な株価変貌の可能性を秘めたテーマ株かと思われるので、長期的な視点で銘柄を選定することが重要です。特に技術力や環境対応能力に優れた企業は、今後も安定した成長が期待されます。しっかりと投資マネーが向かいそうな銘柄を見定めていくようにしたいところですね。
こうしたテーマ株は日本経済新聞やヤフーニュースなどでの報道内容や、時事ネタが刺激材料となってきたりしますが、テーマ株の中でも特に“成長性”を期待できそうで業績を大きく伸ばしてきそうな銘柄には早い段階から注目しておきたいところではないでしょうか。
しかしながら、どの企業がどういうテーマ性に絡み、注力している事業がどれぐらい成長し業績を伸ばしてきそうなのか、銘柄を個別で調べ分析していくのも骨の折れる作業です。
サラリーマン投資家や主婦をしながら株取引を行われている方など、なかなか銘柄を個別に調べたりしている時間を取れないでいる人が殆どではないでしょうか。
新聞やニュースをチェックし旬なテーマ性を探ったり、関連銘柄を個別で分析している時間がないという人は、人気テーマに絡んだ銘柄情報などを配信してくれる株情報サイトに登録して、「自分で調べたり分析する」のではなく、「アナリストが分析しまとめた情報を受け取る」ようにした方が、無駄な時間を省け、要領良く上値余地を期待できそうな個別銘柄を見つけれるようになるかと思います。
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